2017年03月22日

旧古河庭園を訪ねる

東京には名園が多いけれど、多くは江戸の大名庭園に由来し、離宮や役所の敷地、あるいは政財界の著名人の屋敷として利用され、それがさらに公有地化されたた結果、今に伝来したものである。
六義園や小石川後楽園はその代表格だろう。その六義園のすぐそば、本郷通りを北へ下り、再び登り返すあたりにある旧古河庭園は、純粋に明治、大正期に造られた庭である。元は陸奥宗三が別邸として購入した土地だったが、次男が古河財閥の養子に入ったため、古川家の所有となり、今の名がある。古河財閥といっても、今では足尾鉱毒事件の当事者として以外には、あまり知られぬ存在だろう。
最寄駅でいうと、京浜東北線の上中里か、山手線の駒込で、田端で分かれ西と北西に腕を広げた両線のちょうど中間にあたる。近くの中里に。父の従兄弟(いとこ)住んでいて、たまに訪ねて行って再従兄弟(はとこ)たちと遊ぶ機会があると、古河庭園でも行って来たらとよく言われたものだった。だから、名まえは親しいものだったが、結局出かける機会はなく過ごしてまった。まあ、今にして思えば、子供が出かけてもさして面白いところではなかっただろう。

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そんな旧古河庭園に、最近思い立って行って来た。あまり期待せずに行ったのだが、これがうれしい誤算で、だいぶん復元的な整備をしているのかも知れないが、ゆっくり情緒に浸れる素晴らしい庭だった(そうした印象は、続けて訪ねた六義園との比較でさらに裏打ちされた部分があるかも知れない。もちろん六義園は六義園で深い感銘を受けたのだが、そのことはまた機会を改めることとする)。
まず目に飛び込んでくるのは、石の外壁を持つどっしりとした洋館の側面である。整備前は蔦の絡まるお化け屋敷的な様相だったらしいが、今では古河庭園のシンボルとして、落ち着いた風情を醸し出している。手前の芝生越しに眺める横顔が美しい。そして左手に正面に回れば、階段状に作られた洋風のバラ園を備えた姿が、なんと言おうか、瀟洒で明るく、チャーミングでさえある。バラには全くほど遠い季節ではあったが、枝だけのバラもそれはそれで趣がある。バラが満開になったなら、この庭はちょっと華やかすぎるかも知れない、とそんな心配さえしてしまう。
バラ園から洋館を望む.JPG
〔バラ園から洋館を望む〕
この洋館は武蔵野台地に刻まれた台地の縁に立っていて、バラ園は谷に向かうその傾斜地にある。谷の一段低くなった敷地を利用して、洋館とは全く趣の違う和風の回遊式庭園が設けられている。小川治兵衛という人の作だそうである。谷に向かって突き出る展望台からは、右手に洋館からバラ園まで、左手に日本庭園が望まれ、それらが違和感なく一体となって見る者を包み込んでくれる。椅子の腰を下ろし、しばし至福の時を過ごしたのだった。
展望台から洋館を望む.JPG
〔展望台から洋館を望む〕

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けっして広い庭ではないのだが、かえって隅々まで歩き回るにはちょうどよい大きさである。一筆書きで歩こうと思ってうまくいかなくて、同じ所を何度も通過したとしても、距離は高が知れているのである。その中に渓谷や滝などさまざまな要素が詰め込まれていて、見飽きるということがない。ショートカットして洋館に戻って来ようと思えば、敷地南面に東を向いて開く裏門(染井門)から敷地の南、西を廻って洋館に至る馬車道を辿ればよい。
心字池と雪見灯籠.JPG
〔心字池と雪見灯籠〕
庭のあちこちに灯籠が置かれ、それぞれに説明が附されている。途中で番号が付いていることが気になって、行きつ戻りつしながら番号順に辿ってみると、一つどうしても見つからないのがある。見落としているとしたら心残りなので、帰りに受付で聞いてみると、東日本大震災で一基倒壊したのがあったはずだとのこと。そういえば、灯籠の部品かも知れない石が置いてあるところあった。
豪快な崩石積み.JPG
〔豪快な崩石積み〕
敷地の南東隅に食い込むように大きなマンションが建っていた。庭園を望む抜群のロケーションではあるのだが、もしかしてここは元々は敷地の一部だったのではあるまいか。考えさせられることではあるが、これは何を言ってもいたしかたあるまい。
名残の梅林.JPG
〔名残の梅林〕

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帰路駒込駅へと辿る際、横丁を少し入って裏門の染井門を訪ねた。公園の奥に封鎖される形で、大きな門が佇んでいた。馬車の入れる入口である、方角からいってもこちらの方が都心に近いはずである。ということは、かつてはこちらの方がこの邸宅の正門だったのではないか、そんな気さえしてくる。やや登りになった庭園の馬車で歩むと、敷地の一番奥の台地上の洋館の車寄せに辿り着く。いきなり洋館の横顔が飛び込んでくるよりも、ロマンティックではないか。
染井門(馬車道への入口にあたる).JPG
〔染井門(馬車道への入口にあたる)〕
残念だったのは、洋館の内部は予約がないと観覧できなかったことである。しかも時間と人数を限ったものであるとのこと。いつか是非機会を見て訪ねてみたいものである。建物から見ると庭の印象はまた大きく変わるかも知れないし、ことに2階から望んだらどんな風に見えるか、さらなる庭の真価が隠されているようにも思うのである。
心字池から洋館を望む.JPG
〔心字池から洋館を望む〕
タグ:東京
posted by あきちゃん at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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