2017年03月26日

春の足音を聴く

昼過ぎに犬たちと交替で散歩に行った頃は、雨を呼ぶ風が結構吹いてはいたけれど、まだ薄日も射していた。しかし、3周目に入る頃には近づいてくる雨雲に急かされる感じの行程となり、今はもう弱い雨が降ったり止んだりしている。多分降り始めるだろうなと思い、夕方などといわず早々に出かけて来て正解だった。犬たちも満足して今は気持ちよさそうに疲れを癒やしている。
来週末にはもう4月を迎えるというのに、今年はお水取りが終わってからもいつまでもどこかしらいじいじとした寒さが続いている。朝晩は相変わらず冷えこみが厳しく、吹く風も冷たい。しかし、犬たちと散歩をしていて、スリットガラス越しのような太陽が望めている間は、ダウンを羽織っていると少し暑さを感じるくらいで、日射しは明らかにもう本格的な春の到来が間近であることを告げていた。

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〔ほころび始めたユキヤナギ〕
道端は、他にも春を実感させるものに溢れていた。先週末にも見ていたことだが、ユキヤナギがもう本格的な開花寸前といった趣である。二週間ほど前に、あの細い棒のような枝に、綿か何かのようなものが付着しているなと思ったら、それは一部開き始めた花だった。場所は異なるけれど、当時住んでいた町のユキヤナギが満開の坂道の様子を、学校に入ったばかりの長女が連絡帳に描いていた頃がなつかしく思い出される。花を付けた枝を道を塞ぐように伸ばすユキヤナギの間を、自転車に乗った長女がよたよたと駈け降りて来る……。先週はまだ、ほとんど変化がなかったのに、さっき見ると、綿が付着したような段階から遙かに開花が進み、枝が花で重く垂れ下がるようになるのも間近のようだった。
満開の沈丁花.JPG
〔満開の沈丁花〕
満開の沈丁花にも出会った。ぼくの育った家の玄関先には、通路の両側に沈丁花の株があって、毎年初春の玄関先を彩ってくれていた。そう、彩るというのは不正確かも知れない。濃いピンクのつぼみから、白い清楚な花を固まって咲かせる沈丁花の花は、花そのものよりも、その優しい香りで玄関先を包み込んでいるのだった。春を告げる沈丁花の花に、東京の春先の雪がかぶさる情景も何度か見たように思う。ぼくにとってはごくありふれたこの初春の花である沈丁花、最近はほとんどお目にかかることがなかった。それがたまたま散歩道の脇の公園に、たったひと株だけ花を付けているのに、においに導かれて出会ったのである。旧知の花に再会したような喜びで、東京で過ごした頃を思い出してしまった。
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〔ふくらみ始めたサクラのつぼみ〕
サクラのつぼみも、先週までの堅い木の色から、薄いピンク色を滲ませ始めていた。あと少しの日射と春の陽気に恵まれれば、ほころび始めるまでもうあと少しの辛抱といったところだろう。年々開花が早くなってきているので、今年は例年に比べると少し遅いくらいだけれど、文字通り入学式を祝う花が見られるかも知れない。

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〔今年も花を付けた水仙〕
家の庭にも確実に春が訪れていた。鉢植えの水仙である。今年で何年目になるだろうか。特に世話もしていないのに、毎年花を付けてくれている。以前、おいしそうだなぁと、花を眺めているわが家のイヌを紹介したことがある(「『菜穂子』断章2─いざ、生きめやも」)が、強いていえば、イヌから守ってやっているくらいが世話といえば世話であろうか。そう、あと、夏の間の休眠期間に一度だけ、庭を駈け回るイヌたちにひっくり返されたことがあった。土がぶちまけられて球根も何もあったものでない状態になってしまったが、何とか拾い集めて植え直した。そのかいあってか、別段支障なく花を付け続けてくれているのである(「春眠から覚めて思うこと」)。小さいが可憐というよりは濃い黄色のかなり自己主張の強い花なので、イヌたちもちょうど鼻先で気になると見える。ちょうど先週出張中に花が開き、イヌの実害から免れるべく、家内が庭から玄関先に鉢を移してくれていたので、今年も無事花を楽しむことができている。
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〔プリペットの足下で花を付けたクリスマス・ローズ〕
庭で毎年春を告げてくれる花に、クリスマス・ローズがある。初めは前の家にいた自分にひと株分けていただいて鉢植えしていたものを、ここに越してきてから株が太るに従って鉢から庭に下ろすうちに、種がこぼれるのだろうか、いつの間にか庭のあちこちに新しい株が芽生えて花を付けるようになった。これとは別に、新しい種類の株を分けてもらったのも順次庭に植えているので、庭のあちらこちらで、いろいろなクリスマス・ローズが春先に一斉に花を咲かせているのである。なぜ「クリスマス」なのに春告げの花なのかはよくわからないが、わが家の春を彩る大切な花になっている。幸い、イヌたちもクリスマス・ローズの花を食したりしようという気はいまのところないようだ。イヌたちが庭のあちこちに種を運ぶメッセンジャーとして一役を果たしているような気がしないでもないのだけれど……。

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外の地面には水溜まりができ始めている。天気は周期変化に入っているけれども、明日・明後日は寒気が入ってなかなか三寒四温というわけにはいかないようだ。再来週から気温は平年並みに戻るという予報なので、もうあと僅かの辛抱というところだ。本格的な春の到来が待ち遠しいところだが、春が足踏みしている分、逆にその訪れをじっくりと味わうのもまたよいものだ。開花後の気温が低めだと花のもちがいいともいう。
せめて気持ちだけでも、近づいてくる春の足音に心ゆくまで耳を傾けたいと思う。穏やかな年度末の一週間を迎えたいものである。
ラベル: 日常 季節
posted by あきちゃん at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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