2017年03月30日

ヒバンダーラ再訪

同じ山頂を二度極めた経験は実はそれほど多くない。東京の山でも、遠足で通った高尾山とか、御岳山、大岳山、高水三山などポピュラーな山を除けば、御前山も三頭山も川苔山も鷹ノ巣山も六ツ石山も七ツ石山も実は一度しか登ったことがないし、あとほかに、二度登ったところといえば、八ヶ岳の赤岳、横岳、硫黄岳、天狗岳があるくらい。奈良の山では大台ヶ原の日出ヶ岳、大峰山系では稲村ヶ岳と和佐又山、それに少し地味なところで天和山くらいなものであろうか。
今回訪れたヒバンダーラも普通はなかなか一人では2回は登らない山だと思う。連れて行っていただけばこその再訪ではあったが、一も二もなく参加したのはやはり一度めの印象が強かったからである。機会があれば是非もう一度という思いが強かったのである。
釈迦ヶ岳を源流とする旭川が西に流れて十津川に合流する地点の南北に、向かい合うように聳える二つの山。北側がホウソ砂(北)、そして南側が今回再訪したヒバンダーラ(南)、別名、栂野山である。

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前回の記録では、「ヒバンダーラ」と表記したが、山頂の山名板には、「ビバンダーラ」と「ビバンラーダ」が共存している。アイヌ語に由来するともいうその名の由来はよくわからない。ヒとビ、どちらが本来なのかもはっきりしないが、ピとビ、つまりPの音とBの音ならば、日本語では明確に区別するが、他の言語では明瞭な区別がない場合があり、例えば韓国の釜山は、日本ではプサンと呼ぶのが通例だが、韓国ではBUSANとBで表記する。ペキンも中国ではBEIJINである。BとPの区別はどうでもよかった訣だ。ヒバンダーラとビバンダーラはHとBなので、これとは無関係かも知れないが、ピパンダーラとビバンダーラならもしかしたら混同が起き得るかも知れない、などと考えてしまう(似たような関係に、GとKがある。韓国の金浦空港は、日本ではKIMPOだが、韓国GIMPOである)。まあ、言語学の知識に乏しいので、もうこれ以上はいかんともしがたく、「ラーダ」は「ダーラ」の誤記だと思うが、「ヒ」と「ビ」は取り敢えず謎のままとしておくしかない。
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〔ヒバンダーラ山頂の山名板〕

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さて、前置きが長くなったが、ヒバンダーラは里山というには高く険しく、深山というには人懐こく、十津川の渓谷から一気に立ち上がる。食事や休憩を含めても5時間ほどの往復の行程だが、再訪してみて改めてその深い味わいに魅せられた。前回が2月半ば、今回は3月下旬ということで少し時期がずれるが、いずれも冬枯れの季節で、そうであればこそという面もあろう。
というのもこの山の魅力の一つが、大峰奥駈道、なかんずく釈迦ヶ岳の展望にあるからである。もう一つの魅力である優しい自然林が活気を呈している季節には、それ自体が釈迦ヶ岳の展望を妨げてしまうであろうことは想像に難くない。落葉の季節ならばこその展望なのである。前回、帰路に遠望して魅せられた釈迦ヶ岳に、ちょうど半年後の昨年8月に登る機会を与えられ、そのちょうどまた半年後の今回、再びその眺望の地を訪れたというのは、偶然とは思えないものを感じてしまう。

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昨年よりは春に近いというのに、昨年にも増して白く輝く釈迦ヶ岳の神々しい姿を遠望した写真を昨年撮った写真と比べてみて驚いた。明らかに同じ木が写っているではないか! 全く同じ場所での撮影だったのである。偶然にしては余りにでき過ぎている。
木の間に釈迦ヶ岳を望む.JPG
〔木の間に釈迦ヶ岳を望む〕(ちなみに、去年の写真は、こちら。記事は、こちら
弥山・八経方面を望む.JPG
〔弥山・八経方面を望む〕
稜線に出てから西へ辿る優しい自然林も健在だった。山頂こそ展望には恵まれないが、この僅かではあるが、導標はおろかテープもない自然林の稜線歩きの愉しさは、何物にも代え難い。往きは振り返り振り返りしながら次第に北の方から順に顔を出してくる奥駈道を確認しながら、また帰りは正面の木の間に白い稜線が見え隠れするのを仰ぎながら歩く。眺望の利く場所は限られているけれど、白く輝く尾根道を少しでも眼で辿れる場所を見つけた時は、みんなでそれこそ飛び上がらんばかりに喜び合いながら、順番にシャッターを切る。ずっと景色に恵まれた稜線を歩くのがすばらしいのは勿論だけれども、こうして木の間越しの眺望を探しながら歩くのもまた楽しく、展望に優れた場所を見つけた時の驚きと喜びはまたひとしおのものがある。ビバンダーラから戻る稜線の自然林.JPG
〔ヒバンダーラから戻る稜線の自然林〕


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ヒバンダーラへの中谷集落からの道のさらにもう一つの魅力は、稜線に出る直前の直登にある。巻道もあるのだけれど、適当に切り残された切り株につかまりながら、ほとんど四つん這いになって登っていく感じの急傾斜の直登はなかなか他の山では味わえないものである。幸いそれほど高度感は出ないし、ほとんどが土なので落石を心配をすることもなく、ひたすら高度を稼いでゆける。その箇所に至るまでの道も、基本は急な登りだが、適度にインターバルがあって、右手に時折ヒバンダーラの丸い頂を望みながら高度を稼いでゆくのがたいへん心地よい。
今回は春がもうすぐそこまで、という季節だったので、さらにうれしいおまけが付いた。麓の中谷集落は、既に盛期は過ぎたとはいえ白梅、紅梅の花盛りだったのに加え、春ならではの贈り物がそこここに芽を出していて、一瞬目を疑った。少しだけいただいて帰り、当日の晩の味噌汁に、ふきのとうのほろ苦い初春の香りを添えたのだった。
ビバンダーラを振り返る.jpg
〔ヒバンダーラを振り返る〕
ラベル: 奈良
posted by あきちゃん at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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