2017年04月16日

新幹線南側車窓のサクラ

先週、昼間の新幹線で上京する機会があった。今回は久し振りにA席である。
新幹線ではゆっくり景色を楽しむというわけにはいかないものの、それでもやはり車窓の景色は旅の楽しみの一つである。しかし、最近は、新幹線を使うにしても夜間の移動が多いし、昼間の場合もE席かD席が普通だったので、富士山を遠望することはあっても、南側の車窓は本当に久し振りだった。
A席を利用するのが少ない一番のわけは、やはり何と言っても何かの時に出にくいことである。A席から通路に出ようとすると、B・C席の2人の方を気遣わなければならない。声を掛けること自体は別にどうということはないのだけれども、疲れて寝んでいられる方もあるし、PCを広げて作業をしていられる方もある。ぼくが無理に出て行こうとすると、起こしてしまったり、作業の中断を余儀なくさせてしまったりということになる。それを思うとつい気後れしてしまうのである。
逆に、E席だと電源があるのでバッテリーを気にせずPCの作業が出来るし、出るにしてもD席の方だけに声を掛ければよい。E席がベストなのである。次がD席、その次はやはり通路側のC席となる。B席は電源はないし、通路には出にくいし、なによりも両側に他人がいるということで、一番避けたい席である。微妙なのは実はA席で、電源があるという点では条件はE席と同じなのだが、先に書いたような出にくさが席を選ぶネックになってしまうのである。
A席には他にも利点があるにはある。南側の景色のよさである。富士山は見えないが、海が見える。開けた景色という点では南側に勝るものはない。景色を堪能するという点では、A席の魅力は捨てがたいのである。それで学生時分まではE席よりもむしろA席を選ぶことが多かった。しかし、年を重ねるにしたがって、南側の明るさがかえって苦痛になることも起きるようになった。ぼく自身がPC作業をするのに明る過ぎるというのはもちろんなのだが、ぼく自身は景色を見ていたくても、内側のB・C席の方が、特に日の低い季節には直射日光が入るのを嫌われる場合もある。そんなときは意に反してブラインドを下げる必要が生じる場合もあるのである。そんなわけで、一人で乗る場合には、極力三人掛けのA・B・C席を避けるようにしていたのであった。
ところが、今回はE席を取ろうとしたら満席で、さてどうしようと考えた時、ふと電源のことだけが頭をかすめて、A席を選んでしまった。そんなに暑い季節でもないし、南側でもそれほど支障はあるまい……。

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こうして偶然座ったA席であったが、これが大正解であった。京都を発って琵琶湖東岸の山寄りを駈け抜ける車窓に飛び込んできたのは、ピンクのぼんぼりで飾ったような里山だった。平地に島のように浮かぶ山々の新緑に、数え切れないような淡いピンク色が浮かぶのである。こんなにもたくさんのサクラの木があったのである。絵のようなとはまさにこのことだと思った。手前の平地にも、川添いなどにソメイヨシノの鮮やかなピンク色が並ぶ。明らかに植樹したサクラである。それに対し、里山を染めているのはヤマザクラであろう。色は一層淡いが、一本一本がそれぞれの場所で懸命に咲いている。高速で通過するだけでは本当に勿体ない景色だった。
米原を過ぎて琵琶湖に別れを告げてからも、あちこちで里山を点々と彩るサクラに遭遇した。車窓はまさに満開のサクラに彩られていたのであった。この季節にA席をとって昼間の新幹線で上京できたのは、偶然とはいえ幸運なことだった。行き着いた東京も、既に満開は過ぎていたとはいえ、まだ葉桜とまではいかず、遅い花を充分楽しむことができた。
醒ヶ井・柏原間付近の里山のサクラ.JPG
〔醒ヶ井・柏原間付近の里山のサクラ。湖岸のサクラは見惚れているうちに撮り損ねてしまった。米原を過ぎて、関ヶ原に差し掛かってから思い付いて撮った1枚。思いがけず東海道線の列車が写っているので、だいたいの位置が想定できる。湖岸の里山はこんなものではなかった。この何倍ものヤマザクラに彩られていた。〕
東京芸大前の見納めのサクラ.JPG
〔東京芸大前の見納めのサクラ。花見の季節は過ぎた感じだが、それでもまだ充分花を楽しむことができた。〕

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今年のサクラは、何故か散る花びらがあまりめだたない。例年花びらが道路を埋め尽くすような記憶があるのに、今年はどうも様子が違う。赤っぽい葉が萌え始め、花のピンクがそれに埋もれて目立たなくなってきているのに、花びらが散り敷くようにはならない。何度か桜吹雪には出会ったので、少しずつ風に飛ばしているのだろうか。回りの木々のも様子も違うように思う。いつもの年ならサクラが終わってから新緑が始まるのに、今年はサクラがまだ終わりきらないうちにやわらかな緑が溢れ始めている。まるで北国の春のようだ。
ここのところサクラの記事ばかりが続く。若い頃はサクラが嫌いだった。ましてお花見などもっての他だった。しかし、年のせいだろうか、素直に美しいと思えるようになった。ことに震災以降はそうである。斜に構えずともよいではないか、毎年懸命に咲くサクラを見ていると、そう思うのである。あと何回サクラを見ることができるだろうか、そんな思いも頭を過ぎらなくはないのだが。
芽吹き始めたサクラ.JPG
〔奈良に戻ってからの近所のサクラ。葉が芽吹き始め、木全体が沈んだ赤色になってきている〕
タグ:季節 鉄道
posted by あきちゃん at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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