2019年09月21日

初めての北アルプス(その1)

憧れの、と言ったらちょっと違うのかも知れないけれど、いつかは行きたいと畏敬の念をもって思い続けてきた槍ヶ岳に登る機会がようやくにしてめぐってきた。学生時代に一度だけ槍・穂高の縦走が実現しそうになったことがあるが、理由は忘れたが、立ち消えになってしまった。
以来30数年、実は昨年も計画があったのだが、台風がやってきて中止せざるを得なくなってしまった。満を持して捲土重来を期した今年、還暦を目の前にして、初めて北アルプスの峰々を訪れることができたのである。総勢7人(うちお1人は、都合で後から上高地から入り槍沢を遡り、槍ヶ岳直下で合流というハードスケジュール)。ガイドをしてくださった先生ほか4人の、山行をともにされたみなさまに、まずは感謝!

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行程は、穂高駅からバスで中房温泉に入り前泊、早朝に中房温泉から合戦尾根を登って燕山荘、燕岳を往復したあといわゆる表銀座を大天井岳へ辿り、大天荘で一泊、西岳を経て、東鎌尾根を辿り、ヒュッテ大槍で一泊、そして翌朝まだ暗いうちに出発して槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳の山頂へ往復し、槍沢から、槍沢ヒュッテ、横尾、徳沢、明神、上高地へと降るルートである。
バスの時刻の関係もあって中房温泉に入ったのが14時前で、この日は温泉巡りという予期せぬおまけが付いた。温泉裏の焼山に登って、砂地に穴を掘って卵やジャガイモをふかして食べる珍しい体験もできた。温泉は14箇所もあって、とても全部は回り切れなかったが、過半数を超える8つを踏破できた。

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さて、翌朝、山行の初日である。中房温泉を出て少し下って登山口に着くと、そこはもうものすごい人出だった。朝からバスで300人登って来るらしいというのを前の晩に温泉で耳にしていたが、駐車場は既に満杯。いったいどれだけの登山客がいることだろう。昨日あれだけあったテント場はもうもぬけの殻な だというのにこうなのだ。
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〔1早朝の中房温泉〕

登り始めてまた唖然。列が途切れない。まあしかし、こうなるとついて行くしかないから、帰って楽かも知れない。はじめのうちは樹林帯が続き、しかもいきなりの急登で、結構汗をかかされる。
45分ほどで第一ベンチ、さらに45分で第二ベンチ。ともに憩うに適した平場だが、何せすごい人で、あまりゆっくりできる状況ではない。
相変わらずの樹林帯を25分くらいゆくと第三ベンチ、さらに25分でようやく展望が開ける。富士見ベンチである。当たり前と言われそうだが、本当に富士山が見えて感激する。快晴の空に山々が美しく、これから辿る稜線の展望への期待がますます高まる。
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〔2八ヶ岳と南アルプスの間に富士山〕

ここから約45分で合戦小屋。中房温泉からほぼ3時間の行程である。スイカが名物とのことだが、用心して食べなかったのが、後から考えると返す返すも残念!
15分くらい休憩のあと、ひと登りで燕山荘に向かう稜線に出る。ここから燕山荘まではまだ標高差220m余りだが、展望が開け、天上散歩の趣。いやが上にも心の昂ぶりを覚える。
まもなく槍ヶ岳が顔を出す地点があるのを教えてもらった。あとで燕山荘から辿ることになる左手の稜線の上に、右側に小槍を入れて従えた、紛うことなき槍の穂先が望める! 実際には槍ヶ岳山荘のある肩から上の穂先の部分が見えるだけなのだけれど、ここから望む槍ヶ岳の姿は、その崇高さとともに、その巨大さの印象が忘れられない。最初に見た姿が一番印象深く刻まれたということはあるにせよ、今回の山行の中で一番遠くから眺めた槍ヶ岳が最も巨大というのは意外だ。このあともっと巨大な槍の姿を何度も見ることになる訣だから、実際の大きさというより、期待ないし予想した大きさとのギャップが関係しているのかも知れない。
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〔3稜線上に初めて顔を出す槍ヶ岳〕

展望に恵まれた空中散歩を70分程で、遠景だった燕山荘に着く。ここから燕岳へ水筒だけ持って空荷で往復。花崗岩のオブジェを眺めながら山頂に向かう往路も素晴らしかったが、これから辿る縦走路への期待が募る槍ヶ岳に至る稜線を正面に見ながらの復路はさらに素敵だった。まさに天上をフワフワと散歩する感じの、爽やかで軽快な稜線歩きが楽しめた。
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〔4燕山莊をめざす〕

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〔5稜線上に大きくなる槍ヶ岳〕

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〔6燕岳をめざす〕

もちろん燕岳山頂からの360度の遮るもののない展望には、これを表現する言葉をぼくはもたない。北アルプスの山並みから少し離れて、白山、劒岳。その右には鹿島槍と白馬方面の山塊が望まれる。いられるものなら1時間でも2時間でも佇んでいたかった。
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〔7燕岳山頂と鹿島槍・白馬方面〕

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燕山荘から縦走路に入ると、グッと登山者が減るのを実感する。ここまでなら日帰りも可能だか、ここから先に踏み込むと、山上での泊が必要になる。それでもここまでとは思わなかった。それだけ静かな山旅が楽しめる訣だが、逆にそれだけの覚悟が必要なルートということでもあるのだろう。
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〔8大天井岳をめざす稜線〕

それにしてもなんと贅沢な稜線歩きだろう! 刻々と姿を変えながら少しずつ近づいてゆく槍ヶ岳を終始眺めながら歩く爽快な稜線。結構なアルバイトなのだけれど、多少の高低差など忘れてしまう。
合戦尾根の途中で上に羽織っていたものを脱いでいたが、この2,500m級の稜線歩きに入ってからは、紫外線が強烈でむしろこれでも暑いくらい。長袖Tシャツに半袖を重ねただけの夏の服装で充分。背中のリュックの中の防寒具はいったいなんだったのだろうかと思ってしまう。
35分程で蛙岩、さらに75分程で為右衛門吊岩付近を通過。相変わらず槍ヶ岳の遠望を友とするまことに贅沢な稜線歩きが続く。右手に槍の穂先から豪快に落ちてゆく北鎌尾根が大きく、その向こうに双六岳からさらに北へ延びる北アルプスの主脈が、もうため息の出るばかり美しい山容をなびかせている。槍ヶ岳の向こうから、少しずつガスが上がっ来て、時おり穂先をかすめてゆく。
一方、行く手左には、次第に大天井岳が大きく立ちはだかり始める。それとともに目指す大天荘がはっきり見えるようになってくるが、姿が大きくなってくる分だけ、次第に見上げる位置になってきて、標高差の実感を余儀なくされてくる。そして切通岩から大天荘に向けて辿る斜めの道がはっきりと見えるようになる。
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〔9いよいよ巨大になる大天井岳〕


切通岩の前後の、喜作氏レリーフやハシゴがある部分を過ぎれば、いよいよ大天井岳への斜めの道の登りである。大天井岳本体の北側をトラヴァースして大天荘のある東側の肩を目指して真っ直ぐに登る道なのだが、結構な傾斜があり、家内はここで随分とへたばってしまった。大天荘まで400mなどの道標があって励まされるのだけれど、これほど距離と実感がかけ離れて感じられたことも珍しい。大天荘に着いたのは、15時を回った頃だった。燕山荘が遥か彼方に望まれ、1日の行程の長さを改めて思う。
10辿って来た稜線を振り返る(左奥に燕岳).jpeg
〔10辿って来た稜線を振り返る(左奥に燕岳)〕

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〔11大天荘へ迎うトラヴァース道〕

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〔12大天荘と大天井岳〕

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夕刻までの間、明るいうちに大天井岳を往復する。夕食は、到着が遅かった分だけ遅くなり、19:15から。なんと今日は三交替制だ。ハンバーグか、サバの味噌煮をメインとする豪華な夕食にまさに舌鼓を打つ。芋煮が美味しく懐かしかった。20時消灯なのでやや慌ただしかったが、心地よい眠りが待っていた。明日の朝食も三交替制。2番目の4:45を目指すこととし、4:30には並べるよう、4時起床を期して目覚ましをセットする。
本当に久しぶりの山小屋の夜。2,875mの夜は更けていく(その2につづく)。
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〔13大天井岳山頂〕

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〔14大天荘の夕食〕
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posted by あきちゃん at 23:36| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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